戦闘系審神者トーナメント3
本戦二回戦前、薬研藤四郎 控え室の片隅で、俺はひとり端末を操作していた。画面には、さにわちゃんねるのトーナメント実況スレ。そこに書き込んでいるのだ。 大将の知人――鍛刀師“六条の君”が出場した試合から、すでに四試合が終了している。その中で、うちの大将――“笹ノ露”は六条の君の次の試合に出て、勝ちのこった。次の試合では、恩人である六条の君と対戦することになる。 もともと、大将はこのトーナメント参加に乗り気ではなかった。作戦の陽動としての、派手な茶番に過ぎないと思ったのだろう。それよりも、政府内の内通者の捕り物に参加したいと言っていた。が、大将の同僚――ともに歴史修正主義者に潜入している“踊仏”という男がそれを認めなかった。というのも、今回の捕り物の標的は、かつて大将の親しくしていた元政府担当者を、敵に売り渡した男だからだ。どうしても私情を挟むだろうと諭され――大将自身もその自覚があったのだろう。最後には意思を翻して、“あること”を条件にトーナメントへの参加を決めた。 実のところ、俺はそれでよかったのだろうと思っている。この一年、敵地で暮らしてきたが、大将の魂に曇りはない。ずっと美しいままだ。けれど、湧き水のように爽快だった霊力は、霜のごとき冷たさを帯び始めていた。 人の子は、変わりゆくものだ。それは分かっている。 もともと、大将の魂はどんな性質にも片寄らない均衡を保っていて――けれど、脆かった。それが、時とともに、あの子が強くなるにつれて、清らかな水のように変化していったのだ。なおも大将が変わるというならば、守り刀である俺はどこまでもついていくだろう。それが、自然にもたらされた変化ならば。 しかし、今回は違う。大将の魂が冷えているのは、気の抜けない環境のせいな気がする。もっといえば、間近に目にする歴史修正主義者たちの行いに怒りを抱いているのだ。それはいい。正しい怒りをは必要だ。それでも、これから先も敵方への潜入役を続けるならば、今の気負いすぎた調子ではとても続くまい。今回のトーナメント参加で知人に会えば、少しは気が紛れるだろう。 そう考えたのは、やはり的を射ていたらしい。 予選のときから、大将はどことなく寛いだ様子だった。久しぶりに味方の陣営に戻ってきて、安堵もあるのだろう。やがて本戦に進むと、楽しげな表情さえ見せるようになっている。 本当によかった。 次に当たる六条の君は、何かと大将を気に掛けてくれた人だ。大将自身も会いたかったらしいので、ちょうどいい機会である。そういう意味では、俺も次の試合を楽しみにしていた。 さて、そろそろ大将が呼ばれる頃だろうか。と思ったとき、大将とうちの長谷部が控え室に戻ってきた。ちょうど、トーナメントとは別に動いている同僚と連絡を取り合っていたのだ。俺はその間の、言ってみれば留守番のようなものだった。 「ごめん、薬研。遅くなった」 「大丈夫だ。まだ大将は呼ばれてねぇぜ」 「そう。なら、よかった。あの人との対戦、楽しみにしてたから」 大将はほっとした表情になった。 高校生の頃から審神者をしていた大将は、異空間である本丸での暮らしが長いために時間の進みが遅い。二十代の半ばになってもなお、成長しきらない雰囲気を残している。さらに、一年前に俺と恋仲になって神気を身に受けたために、この子の時は止まった。どことなく中性的な大将はなかなか人目を引くようで、今の安堵の表情にも一人、二人、振り返った者がある。 俺はさりげなく彼らの視線を遮って、大将の前に立った。我ながら心が狭い。内心、苦笑する。 そんなこちらの心境は露知らず。大将は俺の手の中の端末を見つけたようだった。興味を惹かれたらしく、俺の手から端末を抜き取って操作しだす。 「薬研、さにちゃんしてたんだ?」 「あぁ。久しぶりに書き込んだが、やはり楽しいな」 「任――仕事中だぞ」 任務中と言いかけたのだろう。慌てて言い直した長谷部が、俺をにらむ。その視線に、肩を竦めて見せた。 「ここであまり気を張っていても、悪目立ちするだけだぜ」 「だが、気の緩みは――」 長谷部が言いかけたときだった。クスクスと大将が笑いだす。この子の無邪気な笑みは久し振りだ。俺も長谷部も驚いて、顔を見合わせた。 「この“通りすがりの刀剣”って、薬研だよね?IDがこの端末のだ」 「そうだけど」 「だめだよ、あんまり六条の君たちをからかったら。近侍さんだって、あれでわりと繊細なんだからね」 「――そう言いつつ、あなたは面白がっているようですが」長谷部が控え目なツッコミを入れる。 「だって、ねぇ?からかいがいのある反応、してるし」 そのときだった。控え室に現れたスタッフが声を上げた。 「――〈白霜(しらしも)〉どの!〈白霜〉どのはいらっしゃいますか?」 それは大将の最初の審神者名だった。 基本的に、審神者は本丸の識別名称で呼ばれる。大将の場合は二度、本丸を構えたので、審神者名として名乗った名は二つあった。最初は新人審神者として。次には引継審神者として。引継審神者が本丸を引き継ぐときには、当然、一緒に審神者名をも引き継ぐことになる。審神者名は必ずしも、たった一人の固有名詞というわけでもない。 それを承知の上で、大将はトーナメント参加に最初の審神者名――〈白霜〉を使うことを条件とした。俺も大将の選択に異論はなかった。最初の本丸の仲間のおかげで、大将は強い意思を持ってここにいるのだから。 「行ってくる」 立ち上がって、般若の面をつけた大将に俺は本体を差し出す。 「遣ってくれるだろ? 俺は大将の守り刀だ。どうか地獄の涯までも、共に」 「……ありがと」 大将は面越しに微笑んだようだった。柔らかくなった声音でそれが分かる。 控え室を出ていく大将の背を見送って、ふと見ると傍らの長谷部は淋しげな顔をしていた。 長谷部が前に仕えていたのは、大将の担当者であった政府職員だ。敵に殺された彼のことを、今も慕っている。大将はそれを承知で、刀解を望んでいた長谷部を自分の刀とした。ゆえに長谷部の主君は今も死んだ担当者だし、大将も主と呼べとは言わない。長谷部が主と呼ぶのは、すでに亡き政府担当者だ。 「……いいな、主と仰ぐ人についていけるのは」 「ああ」 「共に行けるのなら、行けるところまで行けばいい」 「無論。果てるときは共にと、大将は望んでくれたからな」 俺のためというより、長谷部のために、あやすように言う。彼はそれを聞いて安堵ににた表情をした。 本戦二回戦開始前、さにわちゃんねるにて 第一回戦で前スレを消費しきって、次のスレが立っている。 相変わらず、トーナメント実況スレは賑わっている。 100ななしの審神者さん 100(σ・∀・)σゲッツ! 101ななしの審神者さん 二回戦初戦、そろそろ呼び出しが始まったみたいだな。 102ななしの審神者さん 次は扇審神者――〈千古〉と〈白霜〉。 〈白霜〉も一回戦、けっこうすごかったよな。短刀使いでここまで勝ち残ったの、〈白霜〉だけだし。刀剣男士にもいえることだけど、刀は練度と使いどころなんだよな。本当に弱い刀種なんてない。要は上手く生かせるかどうかってだけなんだ。 103ななしの審神者さん 同意。 それはそうと、ちょっと気になることがあるんだが。 104ななしの審神者さん 〉103何だよ? 105ななしの審神者さん 〈白霜〉、体格からして男だろうけど、かなり細いな。ヒンヌーの女子みたいでもあるが……たおやかって感じなのに、面が般若なのな。 まぁ、あの戦いぶりは般若でも違和感ないが。 106ななしの審神者さん 〉104〈白霜〉の審神者名なんだけど、誰か覚えてる奴いない? 十年近く前だけど、うちと同じ美濃国サーバーに歴史修正主義者討伐数一位のエースがいたんだよ。そいつはまだ十代で、本丸識別名称が〈白霜〉だった。 俺は当時二十だけど、同期で同じ〈白〉の識別名称つく本丸をもらったから、よく覚えてる。 107ななしの審神者さん 私、三期くらい後の美濃国審神者だけど、あの子、辞めたって聞いたよ?優秀だけど、まだ若かったから、自分の刀剣を破壊されて、精神的に参っちゃったって。 108ななしの審神者さん 刀剣破壊はなぁ……。 あれは大人でもキツい。審神者辞職の理由の上位に入るらしいし。 109ななしの審神者さん いくら分霊だって言っても、自分が顕現させて一緒に過ごしたかけがえのない相手だからね。 とても、変わりが来るとは割り切れないよ。 110ななしの審神者さん だけど、俺たち戦争してるんだぜ? 仲良しごっこのために、刀剣男士を降ろすわけじゃない。 妖怪寄りとはいえ、神を降ろすんだから、もちろん敬意は必要だ。けど、情に流されて本来の目的を忘れるのは、どうなんだ? 111ななしの審神者さん 〉110お前の本丸がブラックでないことを祈る。 112ななしの審神者さん 〉110厳しい言葉だけど、確かにそうだな。 俺たちの給料をはじめとした戦費は、税金から出てる。それに、歴史修正主義者との戦いの前線にいる俺たちの後ろには、身内や友達、顔も知らなくても俺たちの戦いを支えてくれてる人たちがいる。 皆の支援に報いる戦いができているか。守るべき人たちを守れるだけの戦いができているか。 ちょっと考えこんでしまった。 113ななしの審神者さん 〉112 しかし、刀剣たちを消耗品のように考えるのはいただけん。 114ななしの審神者さん 〉111、113 ゲスパーは(・A・)イクナイ!! 審神者であることがどういうことなのか、自分に問うている〉110はきっと優秀な指揮官だと思うよ。もちろん、刀剣たちに対してもね。 115ななしの審神者さん 〉110-114 どちらの意見も正しいと思うよ。 ただね、うちは仲良し本丸だけど、私は守るべきものを忘れたつもりはない。 私たちは戦争をするために刀剣男士を降ろしてる。彼らは私たち人間の都合に、力を貸してくれてるんだ。 妖怪だろうが神だろうが、優しいんだよ。戦に不慣れな小娘が下手な戦術しか考えつかなくても、見捨てたりしないくらい、優しいんだよ。 だから、私は刀剣たちも大切にしたいよ。私が守らなくちゃならない、身内や友達や顔も知らないけど支援してくれてる人たちと同じくらい大切にしたいんだ。 116 ななしの審神者さん そーだそーだ! 上の数レス読んでたら、うちの初期刀の加州が「主は頑張ってるし、俺たちにもよくしてくれてるよね」って頭撫でてくれた! ほんと初期刀には、頭が上がらん。 117 ななしの審神者さん ほんとそれな! 118 扇の鶴 加州清光は情の深い、いい刀だ。大事にしてやってくれ。 もちろん、他の初期刀勢も面倒見のいい連中だがな。 119 ななしの審神者さん お、扇の鶴が戻ってきた。 ていうか、扇審神者はもとは加州と夫婦だったんだろ? 鶴は加州のこと買ってるみたいだけど、嫉妬とかないの? 120 ななしの審神者さん┐ そういえば。 121 ななしの審神者さん そこんとこ、どうなの? 122 ななしの審神者さん 主が他人のものであった過去を、変えたいとは思わないのか? もし、過去を変えられたなら、主は完全に自分のものであったのに、と。 123 ななしの審神者さん ヤダー、そんな歴史修正主義者みたいなwww 124 ななしの審神者さん なぁ。うちの石切パパが、〉122のレスを見て、すごく悲しそうな顔してるんだが……。 125 扇の鶴 スレチですまんが、〉122のレスからある種の強い念を感じる。 〉119の質問の答えに2レスだけ使わせてくれ。 〉スレ民各位 主の過去については、俺は変えたいとは思わない。 俺が慕っているのは、今の主だ。加州清光と相愛になったが、彼と仲間を喪って、ボロボロになりながらも立ち上がってきた主だ。俺とて神の端くれだから、独占欲もないことはないが……主の過去の何かひとつ抜けたとしても、俺の愛する主ではないのだと知っている。 〉122君のレスから、強い後悔の念を感じている。もしかしたら、歴史を変えたいと今、考えているのだろうか? もし、そうであれば、やめておけと俺は忠告する。 時は、流れていくものだ。火が燃えて消えるように、水が流れ去るように。 それが自然で、もっとも美しい姿なんだ。 上で俺たち刀剣男士が人間のために力を貸していると言われていたが、それは正解で、しかし外れだ。 126 扇の鶴 人の子の生命は儚い。あっという間にこの世を去る。しかし、その儚い宿命の人の子らが、俺たち刀剣を造り、受け継いでくれるんだ。それこそ、何百年とな。人の子が古くから残る俺たち刀剣を美しいと考えてくれるように、俺たちもまた人の子の短い生命を尊いと思っている。 だから、俺たちの本神は人間の戦いに力を貸そうと考えたのさ。 自分の本丸の刀剣に聞いてみるといい。刀はある年代以降、美術品として扱われるようになった。天下五剣であったり、御物であったり、国宝であったり、それぞれにさまざまな評価が下されている。だが、その評価は人の子らがつけたものだ。人の子らには悪いが、俺たちは人間の基準での栄誉を誇りとはしない。 俺たちが自らの誇りとするのは、人の子らに扱われてきたこと。彼らに受け継がれて、長い時を経てきたことを、俺たちは人の子に感謝している。 歴史を変えるということは、俺たちを受け継いでくれた数多の人の子らの魂を、生き様を、消すことになるかもしれない。それでは、俺たちは俺たち自身でなくなってしまう。そんなことを望みはしないさ。 127 ななしの審神者さん 128 ななしの審神者さん 129 ななしの審神者さん 130 ななしの審神者さん うちの三日月が「秘すれば花だというのに、この鶴は明かしてしまったか。仕方がないな」って苦笑してる。 131 ななしの審神者さん 一緒に見てる獅子王が「改めて言われると照れくさいから、内緒にしてほしかったぜ!」だって。 132 ななしの審神者さん うちのいまつるちゃんが、「いわずとも、ひとのこはわかってくれていますよ」ってにこにこしてる。 133 扇の鶴 すまん。バラしてしまった (・ω<) テヘペロ 〉分霊各位。 で、そろそろ流れを変えようぜ。 スレチだし、真面目な話は俺のキャラでもないんでな。 134 後輩 近侍さんの希望なんで、流れ変えるよーv(ゝ▽・)? キラッ☆ いま、試合場に二人が出てきたよ。 先輩はこの試合も近侍さんの本体を遣うみたい。対して、〈白霜〉が持ってるのは、薬研藤四郎の本体だよ!どっちも刀剣男士と仲良しだね! 二人とも、審神者として戦う系だから、面白い試合になると思うよ! 135 ななしの審神者さん この流れで流れ変えられる後輩っょぃ それはそうと、〈白霜〉って前の試合まで普通の短刀使って、普通の戦い方してたよな? なんで後輩が〈白霜〉の戦い方とか知ってるんだ? 136 ななしの審神者さん もしかして、知り合い? 137 ななしの審神者さん 後輩、何気に顔広くね? 138 ななしの審神者さん ていうか、後輩! 知り合いなら〈白霜〉がエースっての、本当か知ってる? 139 ななしの審神者さん それを言うなら、俺は鶴でも後輩でもいいから、聞きたい。 扇審神者の使ってる審神者名の〈千古(ちふる)〉って、初期の一時期に備前の歴史修正主義者の討伐数一位だった本丸のだろ? 気になったから、調べてみたんだ。 扇審神者って、初期の備前のエースだったのか? 140 ななしの審神者さん だけど、それ、七、八十年近く前……。 扇審神者、明らかにそんな年齢じゃないだろ。 141 ななしの審神者さん 新人乙。 審神者は異空間である本丸で過ごすせいで、時間の流れが遅い。体質によっては、何年経っても審神者になった頃の外見のままってこともある。 あと、刀剣男士と愛し合って性的な交渉を持つと、互いの意思にかかわらず神気に染まって時が止まる。扇審神者は加州を嫁にもらってたくらいだから、確実に時間止まってるわな。 142 ななしの審神者さん で、鶴、後輩、どうなの? 143 ななしの審神者さん kwsk!! 144 ななしの審神者さん 初期の備前は、第一次本丸襲撃事件でかなりの数の本丸がやられてるんだよな。 ってことで、kwsk! 145 扇の鶴 おっと、 〉130 の審神者の三日月に「秘すれば花」と言われたばかりだからな。 ノーコメントだぜ! 146 後輩 審神者名は本丸の名前だからね! 引退した審神者の本丸を引き継ぐと、審神者名も引き継ぎになる。 先輩や〈白霜〉が備前や美濃のエースと同一人物かどうかは、分からないよ! っと、試合開始の合図だ! 147 ななしの審神者さん 扇審神者が先に仕掛けた! 前の試合ではあんまり感じなかったけど、 短刀相手に太刀って、すげぇ威圧感だ。 改めて見ると、短刀たちってよく太刀に立ち向かえるよな! 148 ななしの審神者さん ほんとそれな! 149 ななしの審神者さん けど、太刀向けられて、あの〈白霜〉って子、ぜんぜん怯んでないぞ! 太刀の一閃をかいくぐって、懐にとびこんだーーーー!!!! 145 通りすがりの刀剣 うちの大将は相手が太刀だからって怯みやしねぇよ。 上で誰かが言ってたが、刀種に弱い強いはねぇ。 ただ、それを生かせるかどうか――それだけだ。 146 ななしの審神者さん 扇審神者、ちょっと傷を受けたな。 袖が裂けて、血が出てる。 試合後に回復するとはいえ、痛そーーー!!! 147 ななしの審神者さん って、〉145 ……? もしかして、〈白霜〉のとこの刀剣??? ってか、この口調と〈白霜〉の使ってる刀を考えると――薬研、か……? 148 扇の鶴 君は薬研だったのか。久しぶりだな! 君のとこの審神者はすばらしいな! さすが水の性が強いだけのことはある。あれはよく君の本体の“声”を聴いている。 ……それはそうと、控え室でのあれこれをバラしてくれたことは絶許だ。 149 ななしの審神者さん え……? これ、鶴と薬研、知り合いなの? 150 ななしの審神者さん もしかして、扇審神者と〈白霜〉も面識がある……? 151 ななしの審神者さん バラされたこと、根に持ってんのなwww 〉扇の鶴 152 通りすがりの刀剣ことニキ 〉150-151 扇の鶴の主どのには、昔、うちの大将が世話になったんだ。俺もそのときに鶴丸の旦那と知り合った。 〉扇の鶴の旦那 控え室でのことは、謝らねぇぜ(・∀・)ニヤニヤ 俺の近くでいちゃつきだすあんたらが悪いんだからな! しかし、旦那の主どの、すげぇな。あの動きは鶴の旦那のだが、主どののアレンジもだいぶ入ってるだろ? なのに、まったくそれを感じさせねぇ。刀の意思と人の意思がほとんど一体になってるようなもんだ。 153 ななしの審神者さん 何だ、この試合!! 刀剣男士同士の一騎打ちみたいだ! 154 ななしの審神者さん エースだったかもしれない審神者同士の対決か。 っていうか、二人とも人外じゃね? 155 後輩 先輩! 〈白霜〉! まじでかっこいい!! 二人ともがんばれーー!! 〉近侍さん 最後まで試合見てたかったけど、呼び出し来ました。 俺、行きます。 156 ななしの審神者さん ん? 後輩、仕事か? 157 扇の鶴 〉後輩 そうか。武運を。 158 ななしの審神者さん 後輩、帰還部隊の出迎えかなんかあるのか? 159 ななしの審神者さん 扇の鶴が武運をって言ってるが、今日はゲートのシステムメンテナンスで、遡行軍のいる時空ポイントへの転移はできないはずだぞ? 演練だって、このトーナメントのために今日は開かれてない。 後輩の仕事って、いったい何だ……?? 160 ななしの審神者さん そんなことより、試合だろ!! 〈白霜〉のたたみかけるような攻撃! 怖ぇえよ! 刀剣男士の手合わせの方がまだ安心して見てられるくらいだよ! 161 ななしの審神者さん 扇審神者やばいな。 これ、負けるんじゃね……? 162 ななしの審神者さん 二人とも頑張れ!!!!1!! 後輩じゃないが。 もうちょっと、二人の試合を見てたいんだよ! 163 通りすがりのニキ まぁ、心配しなさんなって。 扇の鶴の主どのが、これくらいで負けやしねぇよ。 鶴丸の旦那は戦術家だ。とはいっても、長谷部の地道で堅固な戦術とも、いち兄の正当派の戦術とも違う。こちらを欺き、気づけば形勢を逆転する、まるで奇術だ。 さぁ、大将、こっからが踏ん張りどころだな。 164 扇の鶴 ここで負けたら、皆に驚きがもたらせないからな。 さて、主、そろそろ皆をびっくりさせてやろうぜ! 165 ななしの審神者さん 近侍二人が落ち着いてる……。 扇審神者も〈白霜〉も、まだ戦えるってことか……? 本人と周囲にかけられた幻術とはいえ、試合が終われば治るとはいえ、負傷の痛みは脳に伝えられるんだぞ? 大きな傷はないかもしれないが、けっこう傷を負ってるのに、まだ戦うのか? トーナメント本選二回戦一戦目、“六条の君” 私は脳に伝わる痛みに顔をしかめながら、前を見た。対峙する若者――〈白霜〉は油断ない態度でこちらの様子をうかがっている。ぴんと糸の張ったような彼の緊張感は、彼の近侍で恋仲の薬研のものとよく似ている。 強くなったなと思って、私は面の中で少し笑った。彼がまだ正式な審神者であった頃は、まだ育ちきらない頼りない印象だった。それが、今は細身ではあるものの――否、だからこそ、薄い刃のような鋭い気配をまとってそこにいる。若者が“笹ノ露”の号を得て、敵地に潜入してからもう一年。その間に、おそらく彼は強くならざるを得なかったのだろう。 そんなことを考えていると、〈白霜〉が静かに声を発した。 「あなたは強いですね……。鶴丸国永は僕のところにもいる。頼もしい味方だ。だけど、敵にまわすとこんなに厄介だなんて」 「薬研藤四郎だって、すばらしい刀だよ。改めて戦ってみると、他の短刀とは刀さばきが違う。――君も、彼の“声”を聴いて戦えるほど、強くなったし」私も答える。 それは本当の感想だった。 薬研藤四郎の剣筋は、戦場育ちを自負するにしては、ひどく雅だ。だが、まるで舞のようだと思っていたら、すべてを貫くような鋭い一撃を出してくる。まさに、蝶のように舞い、蜂のように刺す。読みにくい。 同じ短刀でも、厚藤四郎は質実剛健。まっすぐな剣筋をしている。対して、平野は真面目でどこか品がいい戦い方。前田は刃の振るい方ひとつも計算して、勝つための方法を見いだそうとする。乱藤四郎は変幻自在の剣裁き。そんな風に皆が皆、戦い方が違うのだ。 「あなたにそう言ってもらえて、嬉しい」 〈白霜〉は言った。般若の面の奥で、彼も微笑したようだった。それから、ふと空気を変えて「行きます」と呟く。直後、前方から彼の姿が消えた。 身を低くした〈白霜〉が私へと走ってきたのだ。 私は柄を握る手に力を込めた。理性的に言えば、退くべきところ。だけど、それじゃ何の驚きもない、勝てない、と柄から国永の“声が”伝わってくる。分かってるよ。我が身を守ってるだけじゃ、何も変わらない。 だから。 退けと叫ぶ常識を無視して、前へ出る。牽制と誘導の半ばで、刃を繰り出した。〈白霜〉はさらに身を低くして、それを避ける。それでも刃が〈白霜〉の左肩を掠めて、血が散った。と、思った瞬間、彼の短刀が鋭い軌跡を描いて跳ね上がった。首を狙う気か。 そうくると思ったよ。 私はすかさず、足払いをかけた。攻撃に集中していた〈白霜〉は、それを避けきれずに背中から転倒する。「っう……!」と苦しげなうめき声が上がった。そんな彼に向けて、私はすかさず太刀を振り上げる。 だが、さすが短刀遣い。反応が速い。ごろりと転がって、彼は太刀の直撃を避けた。が、私はさらに追撃を繰り出す。〈白霜〉はとっさに上体だけ起こして、頭上に構えた刃で太刀を受け止めた。 「重っ……!」〈白霜〉が呟く。 顔をしかめたいのは、こちらも同じだ。さすが薬研を貫いたという逸話を持つ薬研藤四郎の寄り代。まともに刃を打ち降ろした瞬間、こちらには脳天まで震わすような衝撃が伝わってきた。これはひとえに薬研の“硬さ”と“折れなさ”故だ。 ガチガチと音をたてて、刃で競り合う。 と、そのときだった。 ガクン!! 足下が大きく揺れる。私は刃越しに、〈白霜〉を見た。面越しで表情は分からない。けれど、彼も気づいているようだった。内通者の捕り物で、何かが起きたらしい。でなければ、本来、異空間で地震など起こらないはずのこの場が揺れるのはおかしい。 私は刃を退いた。と、〈白霜〉も転がるようにして、私から距離を置く。 そのとき、もう一度、ガクンと足下が揺れた。 政府施設、転移ゲート前、“夕霧” 俺――“夕霧”は政府の審神者関連施設の近くにいた。 いちおう、研修会に来た審神者という名目で、政府施設の警備の任に就いている。今回の内通者摘発作戦に関して、現世での歴史修正主義者の横槍を警戒しての配置だ。他にも五名ほどの号持ち審神者が、政府施設周辺の警戒に就いている。 その中で俺が担当しているのは、転移ゲートだった。警備担当の号持ち審神者たちは、いずれもいわゆる直接戦闘タイプである。万が一、テロが起こったとしても刀剣男士と共に対応できるだろうということで、施設外部の警戒をしている。対して、俺は刀装造りと刀装の兵士さんたちを召還するのが上手いということで、転移ゲート付近に配置された。転移ゲートは精密機械なので、なるべく付近での戦闘は避けたい。けれど、警備を置かなくはならないし、それが人間――たとえばセコムなどでは少し心許ない。そういうことで、俺が刀装兵を主力とした警備に選ばれたのだった。 護衛の刀剣男士は、山姥切国広と三日月宗近。本丸の他の仲間も来たがったけれど、大人数で目立つわけにもいかない。公正なくじ引きで選ばれたのが、この二人だった。 先ほどまでは状況に余裕があった。刀装兵さんたちに周囲を警戒してもらいながら、手持ちの端末でトーナメントを観戦しつつ。さにちゃんしていたくらいだ。だが、少し前に様子が変わった。本丸サーバーネットワークを監視している“空蝉”からの連絡では、歴史修正主義者側が動き出したらしい。ネットワークは異界があちこちで発生しだしているのだとか。今は空蝉を始めとしたネットワーク管理権限のある審神者が異界をふさいでいるが、それでも本丸サーバーネットワークが不安定になってきているようだった。 捕り物はすでに、最終段階に入っている。警察が内通者を逮捕しようとした瞬間、その男は逃げ出したらしい。今は政府施設周辺の審神者が、内通者を探しているところだった。転移ゲートにも内通者がやってくる可能性がある、と連絡が入っていた。 転移ゲートは、すべて本丸サーバーネットワークを経由する。どこかの本丸へ行くにせよ、遡行軍のいる時空ポイントへ行くにせよ。ネットワークが不安定になれば、転移ゲートは使えない。内通者も他の逃走経路を使うだろう――夕霧はそう思っていた。 けれど。 『――緊急連絡! ターゲットが転移ゲート方面へ逃走! こちらに対抗するために、ターゲットは自ら穢れを帯びて遡行軍の刀を召還している。遭遇すれば戦闘になるものと――』 端末から聞こえてくる、仲間の声。しかし、それが終わるよりも先に、ガキンと高い金属音が響いていた。顔を上げれば、三日月が遡行軍の太刀と刃を合わせている。 「主! 刀装兵を展開させろ!」 遡行軍の脇差を切り捨てながら、国広が叫んだ。そこでようやく俺は我に返って、刀装兵に転移ゲートの守護の陣形を命じる。 あたりはにわかに混戦状態になった。仲間の審神者はテロの警戒のため、内通者までは手が回らない。こちらで対応するしかない――のだが、内通者が召還した敵の刀が多すぎる。ざっと十体はいるだろうか。刀装兵と国広、それに三日月が応戦してくれているのだが、追いつかない。 俺は先輩のように白兵戦に参加できる能力の持ち主ではなかった。今、できることといえば、足手まといにならぬよう、盾兵の後ろに隠れていることくらい。 と、混戦の隙をついて、転移ゲートに駆けていく姿が見えた。内通者だ。スーツは着崩れ、髪は乱れ、しかも穢れの気配を強く帯びている。しまった、と思うが、刀装兵さんたちは混戦に巻き込まれてしまっていた。内通者の逃走を妨げる者は、もはやいない。 だけど、あいつが逃げれば政府側の情報がたくさん流れてしまう。そうしたら、また、何らかの形で遡行軍の被害に遭う審神者や刀剣が出てくるのだ。 そんなのはだめだ。そんなこと、させるわけにはいかない。 「――待て!!」 俺はとっさに盾兵の背中から立ち上がり、男に向かっていった。転移ゲートに飛び込ませまいと、そいつの腕をつかむ、けれど――。こちらの方が踏みとどまることができず、俺は内通者と一緒に転移ゲートへと倒れ込む。途端、ゲートが光に包まれて、作動しようとしていることが分かった。 まずい。今、転移したら、どこへたどり着くか――どこかへたどり着けるのかも分からない。 「国広っ!!」 とっさに初期刀の名前が口をついて出る。主、という叫びが聞こえた気がして、俺は振り返った。見れば国広が、遡行軍の太刀を切り捨てながら、こちらへ駆けつけようとしている。その後ろには三日月も。 「くにひろ!!」 俺は必死にゲートの外へ手を伸ばす。 そして。 本丸サーバーネットワーク、祭壇前、“空蝉” 本丸サーバーネットワーク、祭壇前。 「――転移ゲート発動。目的地未設定。夕霧が転移に巻き込まれた模様。このままでは異界に転移してしまう可能性があるため、こちらで転移軸を設定したわ。トーナメント会場へ」 女審神者が淡々と声を上げた。その周囲を、祭壇から伸びている文字や数字、梵字などの文字の帯が輝きながら取り巻いている。本丸サーバーネットワークと深く繋がっているという証拠だった。 「えー。なんでトーナメント会場なんですか。あそこは避難させるべき審神者が、まだたくさんいるのに」 “空蝉”は唇を尖らせた。と、すかさず女審神者から「わがまま言うな」と叱責が飛んでくる。 「こっちだって、いっぱいいっぱいなのよ!」 空蝉は自分の周囲を巡る文字列の合間から、他の審神者たちをのぞき見た。彼らはいずれも文字列の帯に自身の周囲二メートルほどの空間を、ぐるぐる巻きにされている。今は姿すら見えない状態だ。それほど、本丸サーバーネットワークを制御するため、大量の情報と繋がっている証拠だといえる。 本丸サーバーネットワークで異界を塞いで戻ってきてから間もなく、ネットワークが不安定化した。以来、審神者たちは皆、この通りだ。 それでも、空蝉の周囲にはいまだ余裕があった。両脇を固める宗近と清光が、空蝉の手助けをしているからだ。空蝉は二人と縁を結んでいるため、それを通じて精神を支えてもらっている。他の審神者も護衛の刀剣に支えてもらってはいるはずだが、空蝉は二振。他の審神者より余裕があるのは、そのためだ。 仮に、刀剣たちの支えなしに、本丸サーバーネットワークに意識を繋げば、ネットワーク上の穢れに精神を持って行かれてしまう危険がある。それを最初に実証したのは、空蝉の兄だった。不安定化したネットワークを守るために精神を繋いで――結局、心を持って行かれた。以来、ネットワークに精神で接続する術者はかならず、刀剣男士か他の誰かに精神的な支え役をしてもらうのが決まりだ。 しかし、その支えがあってもなお、現状は厳しかった。空蝉はともかく、他の審神者を支える刀剣たちもあまりの情報量の多さに混乱している。ネットワークのあちこちで異界が口を開いているが、それも防げない状態だ。せめてもの対処に、政府の術者に結界を張って異界の入り口を塞いでもらう程度。それでも、異界から吹き出す穢れのせいで、ネットワークはひどく不安定になっている。 「八方塞がり、か……」 空蝉は唇を噛む。その焦りに気づいたのか、清光が繋いでいた手をキュッと握った。宗近が繋いでいるのとは逆の手で、頭を撫でてくれる。二人の手からじわりと伝わる馴染みのある神気に、空蝉は静かに息を吐いた。 焦っていても仕方がない。 対処しなくては。 心を決めて、空蝉は本丸サーバーネットワークにつなげた意識の片隅で、ある人物の端末を呼び出した。ほどなく、スーツを着た恰幅のいい初老の男が応答する。審神者たちを束ねる役所の長たる男だった。 「――ネットワーク管理者の一人として、提案があります」 空蝉は彼にそう告げた。 試合中断。さにわちゃんねるにて 282 ななしの審神者さん どうなってるんだ? さっきから地震が……。 283 ななしの審神者さん 地震なわけない!! だって、本丸って、異空間なんだよ!!!!? 284 ななしの審神者さん なんか、今日、ネットワークおかしいぞ。担当さんに電話できない。メールはできるけど……忙しいのか返事かえってこない。 285 ななしの審神者さん (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル 286 ななしの審神者さん トーナメント、どうなってるの? 287 ななしの審神者さん 試合どころじゃねぇよ!! 帰ろうと思うのにゲート使えねぇって!!! 288 ななしの審神者さん 運営は!? スタッフかなんか、指示出さねぇの!!? 289 ななしの審神者さん っちょ!! 今、試合場の上空に時空の穴開いた!!! なんか黒ずんだ人間??? みたいなのと、 まんばに抱えられた男の子が降ってきたんだけど!? 何なの? ゲート誤作動なの!!!!??? 290 ななしの審神者さん 会場組だけど、なんか急にヤバイくらいの穢れがあたりに広がった。黒ずんだ人間??? みたいなのが発散してるっぽい!!! 291 ななしの審神者さん なんなの? もーーーどーなってんの!? 292 ななしの審神者さん みんな餅つけ! 293 ななしの審神者さん >292 おまいこそ落ち着けよ。 本丸にいる奴も、会場組も落ち着け。 護衛の刀剣男士も一緒にいるだろ? そいつらは、たいがいのことからお前らを守ってくれる。 ひとりでパニックになるな!!! 294 ななしの審神者さん うん。 295 ななしの審神者さん こんなときなのに、護衛の五虎退が冷静で、 頭なでなでしてくれた。 戦闘のときはちょっと不安そうなときなのに、 こんなときはすごくしっかりしてるんだな。 ありがと、ごごちゃん。 落ち着いた。 296 ななしの審神者さん うちはCCPが手つないでくれてる。 297 ななしの審神者さん ずおが大丈夫ですよ!って笑ってくれた。 うん。大丈夫な気がする! 298 ななしの審神者さん わりと落ち着いてきたみたいだな。 299 ななしの審神者さん にしても、会場組は何とかならんのかな。 とりあえずこの穢れきつい。 脱出できればいいけど、ゲートが。 300 空蝉 緊急連絡!!! 現在、本丸サーバーネットワークが極度に不安定化している。ネットワーク安定を優先させるため、映像・音声通信、およびゲートの使用を一時、中断している状況だ。 政府からのホットラインは、現在、使用できない。 申し訳ないが、号持ち審神者にしてネットワーク管理者の一人、“空蝉”が皆に掲示板、さにったーおよびメールを通じて状況を説明させていただく。 なお、この説明は政府より権限を得て行っている。こんのすけが傍にいる審神者は、緊急コード■△○◎★□◇と伝えて、権限を参照してみてほしい。 現在、歴史修正主義者側から、本丸サーバーネットワークに攻撃を受けている。この攻撃に対応するため、審神者各位にお願いがある。 ネットワーク上の穢れを祓い、安定を取り戻すため、ネットワーク上に霊力を流して一掃したい。皆は本丸、もしくは周辺施設にある祭壇にて、祈ってほしい。祭壇は本丸サーバーネットワークに直結しているため、皆の祈りの霊力をネットワークに送り込むことが可能だ。 ただし、くれぐれも無理はしないように。霊力の少ない審神者や健康に問題のある審神者は、本丸の場の維持だけで十分だ。それで気が引けるというなら、代理で刀剣たちに祈りを頼んでくれてもいい。 祈り開始はこちらの調整がつくまで待ってくれ。 調整がつき次第、再度、連絡する。 301 ななしの審神者さん 302 ななしの審神者さん 303 ななしの審神者さん 304 ななしの審神者さん 305 ななしの審神者さん ネット観戦組だったが……あぁ、映像はもう、切れてしまってるな。とにかく、今、うちのこんのすけに確認した。 空蝉の権限コードは有効だって。 306 ななしの審神者さん ちょ!!!! どーしよう? 祭壇の前で全裸待機すればいいの!!? 307 ななしの審神者さん 祈るって何? 霊力少な目審神者なんだけど、俺の祈りでも平気?? 308 ななしの審神者さん お前ら餅つけ。 こういうの、数年前のネットワーク方式切り替えのときにもあったよな。 新人は知らないか。 309 ななしの審神者さん あー、懐かしいな。 新人や当時のこと忘れてる審神者へ。 合図あるまで、祭壇の前で待機な。刀剣男士も何人か一緒に来てもらえばいい。 ネットワークは神気でも受け付けてくれるからな。 あと、空蝉が言ってたみたいに、霊力少ない審神者や病気の審神者はぜったい無理しないこと!!! さて、俺も陸奥と行くか。 310 ななしの審神者さん 私、病弱審神者だけど、石切丸さんと太郎太刀さんに祈祷頼んだ。 霊力は流せないけど、一緒に祭壇の前にいることにする。 311 ななしの審神者さん 会場組だけど、参加してえええぇぇ!!! 312 ななしの審神者さん お? 313 ななしの審神者さん どうした? 314 ななしの審神者さん なんだ? 315 ななしの審神者さん 会場組です。ゲート開きました。 ネットワーク管理者の審神者が総力を上げて、僕らをここから転移させてくれるみたいです。 316 ななしの審神者さん 転移先は皆、一緒に相模の万屋周辺施設になるらしいな。 そこにも祭壇あるから、俺はそこで霊力流すよ。 317 ななしの審神者さん 自分も会場組なんだけど、今、本丸にメールしたら、初期刀の歌仙が「こっちはちゃんと留守を守っておくから、君も必ず無事に帰っておいで」だって。 普段は厳しいけど、うちの歌仙、頼りになるんだよ。 318 ななしの審神者さん うちも。いち兄が「こちらの心配は無用ですから、なにとぞご無事で」だって!!! 319 122の近侍の蜂須賀 鶴丸国永どの。主の問いに真剣に答えてくれて、ありがとう。 主は親しい刀剣――鶴丸が折れるところを、目の当たりにしてしまってね。 自分があんな采配をしなければ、審神者にならなければ、いっそ生まれなければ……と何かと塞ぎがちだったんだ。今日のこのスレは偶然見つけて、あなたに歴史を変えたくないかと失礼な問いを投げかけてしまったんだ。 無礼を許してほしい。 でも、あなたの答えのおかげで、主は少し持ち直したようだ。 過去は変えられなくても、今の自分にできることをすると言って、祭壇に行ったよ。 僕も行って、霊力を送る主を支えるよ。 本当にありがとう。 320 ななしの審神者さん 321 ななしの審神者さん 322 扇の鶴 >319そいつはよかった。 つづく pixiv投下2015/08/22 |